不当解雇 その29 【尋問だん & 裁判所の和解案提示】
■ 証拠調べ(人証)
尋問を終えた。
準備は、万全。要件事実を意識しながら、被告の不法行為をクローズアップさせつつ、被告主張の矛盾、嘘を集中的に突いていったつもり。
証人宣誓書への署名・朗読をしたにもかかわらず、平然と嘘をつく被告に、さすがにボクも途中、キレそうになった…。
クローズドクエスチョン型式の尋問を心がけたが、結局、オープンクエスチョンが多くなった。
出来としては…、80点程度か。まぁ、はじめてにしては、良く出来た方かと。
■ 裁判所の和解案提示
裁判所から、和解案の提示があった。
原告・被告別々に、提示していることから、裁判所は、双方に対して、うまく和解金額・和解条件およびその理由を使い分けていることは、容易に予想される。
ボクに提示された和解条件は、想定していたとおりのものであった。
裁判所は、まず、
「被告会社は、600万円での和解なら応じることができると考えているようだが」と、前置きした上で、本件紛争の和解条件として
金額:●●,●●●,●●●円
条件:解雇を撤回し、×月×日をもって、会社都合による労働契約の終了。
という条件だったらどう?と、原告であるボクに提示してきた。
ボクは、その提示金額にもう少し上乗せ可能と判断しつつも、
「いいえ、和解は考えておりません。訴状請求の趣旨記載の判決を求めます。」
と答えるだけの、簡単なお仕事を遂行。
判決になれば、損害賠償を受け、未払い給与を全額(+遅延損害金)受け取って、原職復帰となる。
実は、ボクが「出社不要」を言われてから、現在に至るまでに、会社の内情も大きく変わってきていた。
被告会社に勤めていたボクの仲間の多くが、退職したり退職を決意し、退職届を出したり、大量離脱。
どうやら被告会社のブラックな面々(親会社の商社からの出向者、とその仲間たち)がやりたい放題。
自分の知り合い等を縁故採用、さらには、愛人(らしき?)三十路女を採用。当然、これらの人たちは、業界経験もなく、まったく戦力にならないらしい。他の従業員からも、反感を買っており、殺伐とした雰囲気に満ちているとか…。
前事業年度も赤字で、累積欠損の額は、膨らむ一方。
能力のある人たち、先見の明のある人たちは、次々と退社・転職、というのが実情。
こうなってくると、ボクが、判決で解雇無効の言い渡しをうけて、原職復帰したところで、遅かれ早かれ、被告会社は消滅するだろう。
そうであるならば、相応の金員を受け取って、早々に新しいフィールドでの道を歩むのが、明らかに得策だという判断になろう。
人生は、短い。
不毛な時間、ブラックな面々を相手に過ごす時間は、短ければ短いほど、人生は豊かになる。
このような判断もあり、裁判所からの和解案提示に、主位的には、判決を求めることを主張しつつ、副位的に、裁判所提示の和解金●●,●●●,●●●円のおよそ2倍の金員であれば、和解案を受諾することも不可能ではない旨、主張した。
裁判所は、和解案に対するボクの考えを聞いた後、再度、被告会社を呼び、和解条件を詰める話しを、被告会社に対して行った。
その後、被告会社と入れ替わってボクが呼ばれ、当初の提示より、若干(20%程)増額した和解金の提示が行われた。
■裁判所が和解に際し、被告会社に話した内容
裁判所が、和解条件・根拠について、被告会社にどのような話しをしたかは、必ずしも明らかではない。
しかし、裁判所がボクに提示した和解金の額からして、
1 配置転換、ハラスメント、退職強要等の被告会社の行為について、不法行為を認定し、不法行為に基づく損害賠償として相当額の支払い義務がある。
2「出社不要」を言い渡してからの未払い賃金については、100%支払い義務がある(バックペイ)。
3 経歴詐称などなく、解雇は無効
であることを、直接あるいは間接的に、被告会社に伝えたものと思われる。
■裁判所が和解に際し、ボクに話した内容
他方、裁判所は、ボクに対して
1 あなたの能力を必要としている企業、活かせる企業は、たくさんある。
2 原職復帰してまで、やりたいことがある企業なのか?
3 金額面では、裁判所としてできる限りのところまで引っ張っている。
4 その他
などを話した。
和解の席では、裁判所は通常、双方に不利な要素を示しつつ、和解を勧めることが多く行われるようであるが、今回、ボクに対しては、まったく不利な要素がなく、そのような話もまったく無かった。
実は、上記「4 その他」の部分は、完全なるサプライズ!だった。
詳細を書くことは控えさせてもらうが、ボクが経歴詐称をしたり、会社で問題を起こすような人物ではないことを、裁判所が理解していることを示していた。
■まとめ
今回の和解金についての大まかな算定根拠は、次のとおりになると思う。
1 バックペイ…賃金の未払い分
2 損害賠償…配置転換、ハラスメント、退職強要等の不法行為に対する損害賠償
3 加算金
1 バックペイに関しては、労働者にとって、時間は強力かつ絶対的な味方となる。
時間が延びれば延びる程、会社の負担は増え、こちら側の受け取りは増える。
さらに、判決となれば、遅延損害金も加算されることから、早期解決よりも、時間をじっくりとかけた解決のほうが、有利であり、会社側のプレッシャーも大きくなるだろう。
今回のボクの件では、和解条件提示の時点で、裁判所からバックペイとの言及があり、裁判上も解雇無効(不当解雇)は100%明らかだったので、あとは、ボクが主導権を握ることができた。
2 損害賠償に関しては、今回は、ICレコーダー等で、客観的な証拠と共に立証可能であったため、簡単であったが、客観的証拠が無いく、立証が困難な場合は、苦労するかも。
3 加算金と書いたが、このような名目が正しいかは、わからない。簡単に言うと、判決となった場合、会社名とともに判例として残ることになる。つまり、自分たちの恥部が、後世に記録として残るわけだから、これを避けるために、多少の金員の上乗せで、和解で決着させるという考え方に基づく金員。
これは、『事案の筋』によると思う。
今回のボクのケースは、ボクにはまったく落ち度が無い100%不当解雇のケースなので、このような加算金の考え方もできると思っている。
まあ、いずれにしても、ボクは、被告会社のブラックな面々の発言を録音し、残してくれたICレコーダーに感謝だな。
■余談
ある弁護士が言っていた。
「法律って、誰の味方?」との質問に対する答え。
強いものの味方?弱者の味方?お金のある人の味方?
その「ある弁護士」の答えは、こうだった。
『法律は、知っている人の味方』